不倫人妻 快楽に溺れて ★★★

冒頭で小説や建築関係の書物、ドラフタ―を映すことで登場人物の仕事を説明するのは手際が良いと思った。官能小説家の佐々木麻由子が喫茶店で男に不倫を問いただすラストシーンは、作品を書くことで自身の感覚が研ぎ澄まされて気持ちの整理がついた後のような落着きっぷりで素晴らしかった。肝が据わるってこういう感じなのだろうなあ。知的な風貌も「桃色作家 欲望の舌なめずり」の朝丘まりんより遥かに小説家っぽくて似合っている。七月もみじは酔いつぶれた自分を部屋に送ってくれた男に対して“おやじ!帰るのかよ”というぶっきらぼうさ(酔っているにせよ)が不倫の始まりに弾みをかけている感じで小気味よい。吉行由実はベッドに落ちていた女の髪の毛をまじまじと見つめるシーンや、夫が不倫していることを知って内面から壊れていく感じがリアルで素晴らしい。