いんび変態若妻の悶え ★★★★

太宰治の『きりぎりす』を原作とする作品。基本的に話は原作に沿っているけど、淡島小鞠が収入を得るためにSMクラブ(客は荒木太郎!)で働いたり、結婚式のあとで夫・野村貴浩の画家仲間に犯されたりしてピンク風にアレンジもされている。綺麗な淡島の主演作が観られるって言うだけでもうれしいのに、彼女の古風で貧しい生活が似合う感じや、演劇っぽい声の張りあるところが原作とマッチしてその魅力が活かされているので最高だ。あすか伊央がアイドル的側面を担っているのも上手い。劇中で淡島が『人間失格』だけならまだしも『きりぎりす』まで読んでいるのはやり過ぎだと思う。どうしようもない売れない画家だった夫が売れ出していくと、淡島は「失敗しますように」と願う。この心理はたとえば無名→有名(自分だけのものからみんなのもの)へと変わっていったバンドのファンが感じる寂しさと近いものがあると感じた。