「無ケーカクの命中男/ノックトアップ」★★

レンタルビデオ屋だったら“コメディ”じゃなくて“ヒューマンドラマ”の棚に並んでいる方が適切に感じるほど、個々のギャグがつまらなすぎる。「トゥー・スムース 嘘つきは恋の始まり」並み。せっかくのコメディ映画祭なのにがっかり。ジャド・アパトーの作品は肌に合わない。っていうかつまらない。「40歳の童貞男」だって素晴らしかったのは勃起の造形だけで、ギャグはちぐはぐしていたし。
うんこネタの直後にキャサリン・ハイグルがカレーを食べたり、彼女が妊娠中に子供よりも自身の性欲を優先させるセックスをしたり、結膜炎でジョナ・ヒル(主役のセス・ローゲンと体躯及び髪型が似ていて紛らわしい)の見開いた目が強調されていたり、クラブに入れなかったレスリー・マンが放った罵詈雑言がひど過ぎたりして萎えたし引いた。周りがマーティン・スターのひげに対して面白くない言葉を色々言うから彼がいじめられているとしか思えない。唯一少し面白かったのは、ポール・ラッド(冷めた感じで好演)の浮気を疑ったレスリーが彼の外出先に踏み込むけれど実は…というシーン。拍子抜けしても怒る彼女とポカンとしたポールが可笑しい。
テーマも個人的に苦手だった。ゆきずりで中出し妊娠してあーだこーだ騒ぐのが耐えがたい。どうしようもないことだけど、なぜ避妊しなかったんだ!という一点に執着してしまい、俺の中でコメディどころではなくなってしまう。
ありえないが自分が同じ状況で妊娠したら結局産んでしまいそうで怖い。避妊は素晴らしい。
「マイ・ベイビーズ・ダディ」でもそうだけど、こういう不慮の妊娠物語は笑えない。登場人物たちが出産直前直後の特別な体験で舞い上がっているだけに感じる。段々父親風を吹かし始めるボンクラ貧乏人のセスに虫唾が走る。夫婦の愛にしか希望を感じないなんて。出産して子供を持つならだれでも通過するであろう幸せの最中を切り取られても、その後に待つ不安の方に気が行ってしまい、素直に楽しめない。洒落になってない。子供はペットじゃないんだ。不幸の連鎖はもう嫌なんだよ!
前説の人が今作を観て結婚して子供が欲しくなるって言っていたけど、そんな気持ちには全くなれなかった。あと、産んだ後を描いた「ベイビートーク」は上手いなと思った。