84 Nash 「Band for Hire」

1998年発表。全18曲34分54秒
傑作
Rocathon Recordsから二枚目となる本作は彼らにとって「Bee Thousand」に当たるポップソング集。
前作より曲のツボが明確に強調されているし、ケヴィンのヴォーカルはより高らかになっているし、ベースはよりブリブリに、ギターもよりコード感が出るようになってきたし、ドラムもよりドカドカになっている。全てで向上している。録音も8トラックになっているし、ミックスはジョン・ショウが担当したって所も嬉しい。内ジャケットのコラージュは弟のアダムが担当。前作同様サンクス欄にボブ・ポラードの名前もある。

2作目でも全く煮詰まった様子は見せず、前作以上のスピードで矢継ぎ早に良い曲を繰り出していく。ロバート・ポラードは呼吸をするように曲を書いているっていう表現をされるけど、今作の彼らもそんな感じなんじゃないかと思わせる程の好調っぷり。彼らもGBVみたいにギターのメロディが呼吸するみたいに循環するものが多くて、GBVの本当のフォロワーだと思う。GBVのローファイ期を「The Kings of Yeah」と本作で一気に通過したといってしまいたい。

冒頭の「the giggle party」からして何かやってくれそうな頼もしさと勢いに満ちてる。「snacks of wealth」なんかはギターとベースもリズム楽器になっていて、ロック以外のロールの素養も感じさせるし、「i speak in falcon」の飛び跳ねるようなリズムに「アーッッウー」っていう雄たけびが聴こえて部屋で聴いていても揉みくちゃにされている感じがする。「actress from actorsville」はコード進行が素晴らしい名曲。こんな曲が書きたいなあ。「no more phones」は声にエフェクターをかけていてサイケ度高し。「ice breakers」はラストのベースとギターが戯れるかのような演奏はGBVがよくやるので聴いていてグッと来る。「shot bully」の激しい曲でも気を抜いたらもう終っているという潔さときたら!「mao tse tsung」はギターかき鳴らす音が前面に押し出されていて、ヴォーカルは遠くの拡声器から聴こえてくるような音だし、「ナナナ…」っていうコーラスも「「パパパ…」コーラスなんて死んでもしない」って言っているみたいで最高。「invisible」も「mao tse tsung」みたいにギターが前面に押し出された曲だけど今度は近くの浮浪者が喚いているみたいな声であっという間に終る。こういう風にしおらしく終ってくれるから彼らの曲は飛ばそうと思うことが無いなあ。「i've got 'em all」は切ない名曲。これなんてラジオで流しまくれば売れそうなのに勿体無いなあ。「room of steel」はインドネシアのラジオから流れてきそうな、アルバムの中では異色な曲。この曲でも頻繁に「ナ!ナ!」って言っている。「ur stripes」はもっと聴きたいのに一分も経たないで終ってしまうのが歯がゆい。「slower version of friends」はペイヴメントの「Here」みたいなほっとする曲。「to the equator」「イェー!」って叫ぶイントロからヘンテコなリフはさんで意外と展開する凝った構成の曲。最後も「イェー!」締めるし。「sandful of hand」やっぱりギタリストが作曲しているからかギターのメロディが綺麗な名曲が多いなあ。「cinnamon block」これがイントロでもよかったんじゃないかなと思えるスタートを切るみたいなイントロのリズム「they cancelled your birthday」はぶっといリフから一瞬でピロピロいうリフに切り替わる所がかっこいい。「demon national」はこのアルバム一綺麗なリフをロバートみたいな疾走感溢れた弾き方で奏でられたらたまんらない。