84 Nash 「The Kings of Yeah」

1997年発表。全20曲42分21秒
メンバーは

  • ケヴィン・エリオット(ヴォーカル)
  • アンディ・ハンペル(ギター)
  • J.P.ヘルマン(ベース)
  • ジョナサン・プライス(ドラムス)(当時はサポート・メンバー)

グループ名の由来はスケボーに書かれていたロゴから採ったとか。高校時代に出会ったケヴィンとアンディとヘルマン達はジョナサンと一緒にヘルマンが買ったばかりの4トラックレコーダーでカセット・アルバムを作りまくっていたらしい。それがGBVの永久マネージャーであるピート・ジャミソンの耳にとまり、Rockathon Recordsの第一弾としてリリースされたのがこのアルバム。
同じRockathonからアルバムを出していたThe American Flagのような職人気質なポップさに比べて彼らはあまりに素人過ぎる。でも俺は84 Nashの方が好き。っていうか俺は彼らのことをGBVの後継者だと思っているくらい。だってこのアルバムは初期GBVのような荒々しくて、投げやりで、とびきりポップで、当然のごとく曲は短いっていう本当にど真ん中な作品だし。
アンディとヘルマンの書く曲はロバートのそれと比べると確かに劣るが、GBV(ロバート・ポラード)が唯一もっていなかった“若さ”に溢れた演奏とヴォーカルでかなりの部分をカバーしている(このアルバムが出た当時はメンバーは高校生くらい)。
メンバーが影響を受けたと公言している通り、GBVの「Bee Thousand」のように曲が次から次へ繰り出されることによる良い意味での印象の薄さがあったり、ぺイヴメントの「Slanted and Enchanted」みたいな暖かい気だるさも感じさせる所も最高。俺にはウィーザーの「Pinkerton」みたいな鬱憤が爆発した印象もあった。90年代のUSインディロックが好きな奴らが集まって出来た作品ってヘタウマに甘えてぬくぬくとなりがちだけど、彼らがそうならなかったのは内輪では終らないっていう反骨向上心に満ちていたからじゃないかな。と彼らの以降の成長っぷりを見ると思う。
1曲目の「Mergatroid Megacity」はイントロのケヴィンのヴォーカルからウィーザーばりのギターが刻んで来る流れが素晴らしい。「Young Bruce Springsteens」はヘリウムを吸ったみたいな声と小刻みなピアノのリズムとそれを叩き潰すみたいなドラミングが最高。中盤の「Girl Friday」みたいなゆったりした曲でもコードがズリっと変わるのが気持ちよくてちっともダレない。「Congratulation Graduation」はロバートみたいな疾走感のあるメロディだし、タイトル曲の「King of Yeah」はシンセがピーンピーン鳴っている中でジャキジャキギターとメロディを刻むベースが楽しそうに演奏していてとても踊れる。

GBVのD.I.Y.精神をがっつりと受け継いだ若者達が作った好盤。