「Tributary」

トリビュート・バンドに関するドキュメンタリー。監督のラッセル・フォスターは8-トラックレコーディングのドキュメンタリー「So Wrong, They're Right」*1なども作っている人物。

日本だとトリビュートバンドってなじみが薄いけど、まねだ聖子等のものまね稼業の人々を思い浮かべると近いと思った。アメリカは本土が広く、ライブを観にいけない人が多いため彼らに対する需要があるのだろう。同じようなトリビュート・バンドが沢山いるので、ギグの値段が安い方にオファーがいってしまうという価格競争の現状や、本物を知らないファンがラジオで流れてきた曲をトリビュートバンドの曲だと思ったというエピソードが面白い。

監督はトリビュートバンドを4つのグループ(ポスト・モダン、ワーキング、トゥルー・ラブ、ソーシャル)に分けているけど、観ている方としては趣味バンドと稼業にしているバンドという違いしか感じられなかった。

エルビス・プレスリーのトリビュートバンドは2組紹介されていた。Brothers E*2は太った二人のプレスリーがいるコミカルなバンド。コーラスの女性はさらに太っている。もみ上げも利根川みたいに太い。El Vez*3は細身で少しグラムっぽいチカチカする照明に照らされるエルビス。brothers Eに比べるとかっこいい。

ザ・ローリング・ストーンズのトリビュートバンドもMiss U'sとSticky Fingers*4という二組が紹介されていた。Sticky FingersというストーンズのバンドはMiss U'sよりは稼業として活動しているらしく、演奏がしっかりしている。週三日はライブをするらしいし、金を稼ぐだけはあるわ。

ブラック・サバスのトリビュートもSabbracadabra*5とWar pigs*6という2組が。どちらもボーカルの髪型がそっくりで、白い服を着ているので特徴的な違いは見られない。

以下()内はトリビュートされるバンド名

2 fast 4 love(モトリー・クルー

あるファンは、本物よりも自分達に近い存在という理由で、彼らのことを本物より好きとまで言っている。このバンドは初期のモトリークルーが好きらしく、バンドの特定の時期だけにトリビュートしている。みんなヘットバンキングしまくりだし、おそらくファンも初期が好きなのではないだろうか。活動時期によって音楽性が変わっていったバンドだとファン層も変わっていくだろうからね。

Futuristic Dragon(T.Rex

ドラムがボーカル。カントリーやレゲエのリズムでアレンジを加えて楽しませる。

Men & Volts(キャプテン・ビーフハート

79年から80年にかけて活動した。このバンドは後にオリジナル曲を書くようになっていく。

Moronic Reducer(デッド・ボーイズ)

パンツ一丁に革ジャンを羽織った小太りのおっさんがボーカル。しまいにはヌードになってシェービングクリームを肛門に注入する。来日希望。

Mongoloid*7ディーヴォ

ちゃんとヘルメットや亀頭みたいな帽子もかぶっている。トリビュートバンドを始める前のバンドは、客も少なく、収入も少なかったようだが、トリビュートバンドを始めたら客は入るは金は稼げるはでとんでもない事になっているとか。

そしてガイデッド・バイ・ヴォイシズのトリビュートバンド、Giant Bug Village。彼らは94年のイーストコーストツアーで前座を務めたこともあるらしい。
この作品で紹介される他のバンド達のトリビュート対象は、ビジュアルやパフォーマンスが強烈だったり、超メジャーなミュージシャンばかりなので、普段着のGBVは浮いていて面白い。ガイデッド・バイ・ヴォイシズは曲のストックが異常に多いから、当然ライブでやらない曲が出てくる。彼らはそういった曲を演奏して喜ばれている。あと、このバンドのギタリストであったクリスは後に本物のラストメンバーのべーシストに抜擢されている。

ロバート・ポラードが彼らに対して質問されているインタビュー記事*8を読むと、彼はトリビュートバンドに対してかなり寛大だということが分かる。自身もワイヤーの復活ライブの前座で本物がやらなくなった「ピンクフラッグ」からの曲を演奏するアウトドア・マイナーズというトリビュート・バンドを見ているようなのでファンの気持ち分かるんだろうなあ。

RUSHの曲をワンマンで演奏していたthrones*9が気に入った。調べると彼はカバー曲として演奏していたみたいで、トリビュートバンドではないようだ。彼のライブも見てみたい。

他には
Dressed to Kill(キッス)、Time of Dying(レッド・ツェッペリン)、Herb(ハーブ・アルパート & ティファナ・ブラス)、Cherry Bomb(ランナウェイズ)、Power Windows*10 (ラッシュ)、Yesterdays(イエス)、British Steel(ジューダス・プリースト)、83年から活動していたHigh Voltage(AC/DC)なども紹介されていた。