Charles Douglas『Statecraft』

チャールズ・ダグラスの4thアルバム 04年発表 全16曲45分53秒

3rdアルバム『The Lives Of Charles Douglas』から5年ぶり。その間彼は2000年にベジタリアン・ミートの相方Manish Kalvakotaのアルバムをプロデュースしたり、2003年にManish Kalvakota with Charles Douglas名義で『Outer Limits』というアルバムを出したりしている。

今作は良い具合に成熟している。プロデュースはソニック・ユースなどを手がけたワートン・タイアーズとチャールズの共同。

チャールズは一歩間違うと幹てつやみたいなコミック・シンガーになりそうな素質を持っているので、どう転ぶのか楽しみだったのだが、今回はジョーイ・サンチャゴというくせのあるミュージシャンを起用する事でうまい具合にテコ入れを図って幹てつや化が抑えられ、コンパクトでシリアスなポップ・ソング集になっている。このへんは本人も自覚的なのかな。個人的に「ピクシーズ+マルクマス+幹てつや÷100」=本作といった印象あり。

そういえば『The Lives Of Charles Douglas』はモー・タッカーという唯一無二なミュージシャンが参加して、これも素晴らしいポップ・ソング集になったんだけど、どこか幹てつや風だったのは歌詞がコメディ要素満点の自伝的内容だったからなのか。

彼の実質的なデビュー作であるベジタリアン・ミートの『Let's Pet』は若かったからこそできた作品だと思う。そういったアルバムを何枚も作られるよりこっちの方がいいな。いつまでも青さを売りに出されても困るし、本人も嫌だろう。

今作を聴いて、やっぱりジョーイのギターって独特だと再確認した。
「Free At Last」や「Blues for Catalina」(名曲)のイントロから炸裂していて、聴いただけで彼だとわかる。「Splitting the atom」みたいな享楽的なフレーズを弾けるのは彼だけだ。タイトル曲の「Statecraft」では曲に多大なるロールを加えている。彼は唯一無二のアゲアゲ・ギタリストだと思う。

ジョーイが参加している曲は16曲中5曲と少なめだけど、チャールズの書く曲自体が良いので物足りなさは感じない。一番気に入った曲だってジョーイが参加していない、ドラム以外の楽器をチャールズが演奏した「Ancient mysteries」だし。

コード進行の映えるチャールズの曲を聴いて実感したのが、俺はロック・ミュージックに暴れるギターを求めていないという事。暴れるギターは隠し味というか、絶妙なスパイスというか、あくまで付属品だし、そうあるべきだと思う。ジョーイのギターは素晴らしい付属品だ。

「I don't care」の歌詞はこれぞ敗者の歌っていう感じで大好き。誰も同情しないし、歩み寄らない、そんな事気にしないっていう悟りが感じられる。
「Take it off」の女性コーラスが思いのほか曲に合っていて良かったので、次回作ではもっと使って欲しい。2ndアルバム『burden of genius』に収録されていた名曲のリメイク「The Rabbit Never Gets the Carrot, Part Two」も収録。

彼の近況:今度アレックス・マッコーレイ名義で出す小説のタイトルが「lost girls」から「bad girls」に変わったようだ。今の所今年の6月に発売される予定らしい。